DVD 101分
Forward Motion: Advancing on the Electric Guitar
初の教則ビデオ Intervallic Rock から17年経て発表された新作です。
パッケージや出版社のWEBでは続編的内容というニュアンスで紹介されていますが、本作単独での使用でも問題はありません。
ただ彼の特徴であるワイド・インターヴァルが連続するフレージングは、音楽的にもそうですが、特にテクニック的なレベルが高いので、彼のように使いこなすのは相当なチャレンジとなるでしょう。
一方、インターヴァリック・フレージングだけではなく過去のブルースやロックの定番的リックを含め、実に様々な要素を組み込んでソロを構成しているところは、どなたが見てもインスパイアされるものは少なくないでしょう。新しい刺激を求めておられる方は要チェックです。
Improviser's Ultimate Warm-up
カール自身がやっているウォームアップ・エクササイズを紹介します。
音楽と直接結びつかない単なる指の運動的なものではなく、ギターのネック全部を使って、12のすべてのキーで、しかもポジションや移動のパターンを決めず即興的にスケールを弾くというもの。ネックを上がりきったら、今度は最後まで下がっていく。
まずメジャー・ペンタトニック・スケールで、続いてメジャー・スケールで行いますが、サークル・オブ・5thの順ですべてのキーに移動して続けます。
次に、任意のスケールから任意の4音を弾き(ここではメジャー・スケールの3-4-5-6の例で行っています)、同じフォーミュラで、サークル・オブ・5thに従ってすべてのキーに移動していくパターン。同様に3音でも行います。
Line Development
ここが最も興味深いところだと思いますが、どうやって彼があのユニークなリックを生み出しているかという秘密の紹介です。
1978年から自分でラインを作っては記録しているというリック・ダイアリー(ネタ帳ですな)を実際に見せてくれ、このネタ帳を利用する3とおりの方法を教えてくれます。
新しいネタができたらこれを実際のグルーヴに合わせて弾いて試します。
Minor Key Lines
シンプルな音列や定番リックからいかに自分ならではのラインを作っていくかの過程を例示してくれます。
Major Key Lines
同様に基本的なメジャー・ペンタトニック・スケールからオリジナルなラインを作ります。
Dominant Key Lines
このあたりではもうマイ・フェヴァリット・リックの紹介という感じになっています。
E7キーで、ミクソリディアン・モードにメジャー・ペンタトニック、マイナー・ペンタトニック等も併せたフレージング。
オリジナル曲 Bring Me Down のソロ・セクションのグルーヴに合わせたデモ演奏もあります。
Bending
ベンドからヴィブラートをかけるやり方にもいろいろあるということで彼なりの方法を紹介し、最後にはマイク・ブルームフィールドのニュアンスでブルースをプレイ。
Viburato
ここではヴィブラートをテンポとの関係から考察。G7のシャッフル・ヴァンプでデモ演奏。
Modern Chord Voicings
転回型やジャズ的な3〜4声程度のヴォイシング、エクステンション・コード、モーダル・コード等のコンセプトを使って、ロック系のグルーヴにもサウンド・カラーの変化が生まれます。
マイナー・ブルース進行によるオリジナル曲 Diamonds を使ったデモ演奏もあります。
セクションの合間には Dave Marotta (bass)、Chad Wackerman (drums) とのトリオによる3曲のスタジオ・ライブがフル・トラックでたっぷり楽しめます。
1. Topanga Hoedown
2. Highway 27
3. Wonder Jam
本編は約84分ですが、使用機材の紹介、トリオでの演奏 Firehouse Jam、本編のデモ演奏の別テイクが4種類、と17分程度のボーナス映像が楽しめます。
また具体的な紹介はありませんが、かなり凄そうなヴィンテージと思われるギター・コレクションがバックにずらりと並んでいて、その一部はセクションごとに楽器を持ち替えるサービスがありサウンドも楽しむことができます。
時代に即したといいますか、iPod用にフォーマットされたMPEG4のビデオ・ファイルや、演奏例を練習するためのMP3のマイナス・ワン・トラックも収録されているところは感心するのですが(これらを利用するためにはパソコンが必要です)、今回は譜例がまったくありません。
どちらかというと、そっくりそのままマネするようなレベルのものではないのかもしれませんが、内容と照らし合わしてもある程度の採譜は付属していたほうが望ましいでしょうね。
ひょっとするとかつてのDCIやREHのビデオのように後から採譜本として発売されるということもあるかもしれませんが、最近の傾向からいうと何も付かないというのはむしろ意外です。
あるいは採譜を引き受けてくれる人がいなかったのでしょうか?(笑)